フレンチ・ラン(2016)あらすじと作品紹介(ネタバレなし)




鑑賞済みの方は、ネタバレありの解説記事もご覧ください。

『フレンチ・ラン』はどんな映画?

アメリカ人のスリ。フランスはパリで仕事をしていたところ、テロリストの爆弾入りの荷物をスッてしまい、それを捨てたことからテロリストに間違われてしまいます。捜査するのはCIAの捜査官。どうにか誤解は解けたが、それでは誰が何のためにテロを起こしているのか。目まぐるしい展開の中、二人はコンビとして真犯人を、黒幕を追うことになります。

典型的な「相棒モノ」、いわゆるバディ・ムービーのアクション作品。しかし、アメリカではなく歴史と文化の都パリが舞台となっており、その点一味違います。追いつ追われつのハラハラ展開も、パリの美しく細やかな街並みを背景にしているとずいぶん趣が異なります。サスペンス要素あり、社会問題への目配せもあり、しかし痛快さと爽快なスピード感を失わない映画です。

主演は『パシフィック・リム』(2013)『マンデラ 自由への長い道』(2013)などに出演、次期007(初の黒人ボンド)候補として取りざたされるイドリス・エルバ、そして人気ドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』や『暮れ逢い』(2013)などで知られるリチャード・マッデン。ともにイギリスの俳優です。監督もイギリス人、『ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館』(2012)などのジェームズ・ワトキンス。


『フレンチ・ラン』あらすじ

アメリカ人のマイケルは若い頃からケチな犯罪を積み重ね、流れ流れて今はパリでスリをやっている。その腕は確かで、ターゲットに気づかれることなく鮮やかに財布や時計をくすねていく。フランス建国記念日の前日、彼は道端で頭を抱えるひとりの女性の荷物を丸ごと盗む。目ぼしいものは携帯だけで、残りはそこらに放り捨て、彼は立ち去ろうとする。次の瞬間、背後から大爆発。捨てた荷物の中に、テロのための時限爆弾が含まれていたのだ。彼は辛くも被害を免れたが、近くにいた4人もの命が失われた。

フランス警察とは別の立場でそれを調査するのがCIAの捜査官・ブライアー。犯罪者を嗅ぎつける感覚は抜群だが、命令無視・無茶な捜査は当たり前という、組織にとってはかなり問題のある人物だ。現場の防犯カメラに映り込んでいたマイケルを早々に発見し、必死の追跡劇の末に捕える。マイケルは自分はただのスリでテロリストではないと訴える。ブライアーもそれは真実らしいと確信する。

では誰がテロリストで、その目的は何なのか? ここは現代のフランス・パリ。爆弾テロが起これば真っ先に疑われるのはイスラム教徒の移民たち。しかし話は単純ではない。インターネット上には謎の勢力が犯行声明を出す。右翼・左翼の市民たちはそれぞれに過激化し、暴徒となっていく。そんな混乱の中で、真犯人はいったい何を狙っているのか? ブライアーとマイケルはコンビとなって謎に迫っていく。彼らとCIA・フランス警察・テロリストたちの三つ巴の駆け引きはヒートアップしていく。


鑑賞前のポイント

この映画の原題は「バスティーユ・デイ(Bastille Day)」。これはフランスの建国記念日である7月14日を指し、毎年「パリ祭」が行われる、フランスとその国民にとって非常に大切な日です。「バスティーユ」というのはバスティーユ牢獄を指し、1789年のこの日に市民が暴徒化してここを襲撃した「バスティーユ襲撃」事件はフランス革命の発端となりました。つまり、王政を廃し近代市民による社会が実現された文脈上、現代に連なるフランスの民主主義にとっての非常に大切な日なのです。

上記のような高校世界史の基礎レベルの知識があれば、特に終盤のシーンなどは何をモチーフにしているのかということがよくわかるでしょう。2015年のシャルリー・エブド事件など、近年はパリにおいてテロが頻発し、市民の不安と怒りは高まっています。それに伴う、移民排斥を訴える極右勢力の活発化や、それへのカウンター勢力の先鋭化は、まさに現在進行形の社会問題といえます。

というわけで、「フレンチ・ラン」というタイトルでは何が何やらさっぱりわからないという問題があります。だいたい、そこまでランはしていません。ただしスピード感はしっかりと持続していきますし、90分というコンパクトさも手伝って、最後までハラハラ楽しませてくれる映画です。上記のような背景知識があればよりよいですが、なくても十分楽しめるという点もこの映画のよいところでしょう。二人の「まなざし」に注目です。 

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