聖の青春(2016)あらすじと作品紹介(ネタバレなし)



鑑賞済みの方は、ネタバレありの解説記事もご覧ください。

「聖の青春」はどんな映画?

1990年代、若い世代が旋風を巻き起こす新時代が将棋界に訪れていた。その筆頭が、のちに史上初の七冠となる羽生善治。彼を中心とする同世代の棋士達は「羽生世代」と呼ばれ、大いに注目を浴びていた。その中に一際異彩を放つ存在があった。「東の羽生」に並び「西の村山」と称される、「怪童」の二つ名で呼ばれる村山聖(さとし)である。幼少期から難病を患い、29歳でその短くも壮絶な生涯を終えたこの天才棋士の生涯を描く、実話を基にした同名小説を原作とする映画。

早世の天才棋士として知られる村山聖という実在の人物を主人公とする、壮絶な人間ドラマです。村山のライバルとしての羽生善治の存在も非常に大きく取り上げられており、現在進行形で伝説を築き続けている誰もが知る人物が登場している、という点にも注目です。とはいえ、将棋に親しむ方のみならず、幅広くすべての人にとって受け入れやすい物語です。子どもの頃から死に向き合い続けてきたひとりの青年が、いかにしてその命を燃やし、人生という死闘を闘い抜いたのか。シンプルかつ強烈に「いかに生きるべきか」という問いを投げかけてくる映画です。

村山聖役には、役作りのため大幅に体重を増加させた松山ケンイチ(「デトロイト・メタル・シティ(2008)」「ノルウェイの森(2010)」など)。羽生善治役に「桐島、部活やめるってよ(2012)」「GONIN サーガ(2015)」などの東出昌大。村山の師匠・森信雄役に「ぐるりのこと。(2008)」「凶悪(2013)」などのリリー・フランキー。他に竹下景子、染谷将太、柄本時生、筒井道隆ら。監督は「宇宙兄弟(2012)」の森義隆。


「聖の青春」あらすじ

大阪に暮らすプロ棋士の村山聖(松山ケンイチ)。類い稀な才能が注目される若手だ。幼い頃から腎臓の難病「ネフローゼ」を患い、それゆえに肥満体型である彼は、しばしば病魔のために体調を崩しながらも勝利を重ねている。強い師弟愛で結ばれた師匠の森信雄(リリー・フランキー)ら周囲の人にも支えられ、キャリアを進めていた。

聖と同世代には新鋭と目される若手が多く、中でも東京の羽生善治(東出昌大)は非凡の存在として、既に先達の猛者たちを次々撃破し、複数冠を獲得していた。聖は羽生に強烈な対抗意識と憧れを抱き、急き立てられるように東京への拠点移動を決める。師匠の森は優しく背中を押し、将棋以外の日常生活のあれこれにまるで無頓着な聖のため、東京での後見人を将棋雑誌編集長の橋口(筒井道隆・モデルは原作者の大崎善生)に頼む。

東京で知己を得て、棋士としてさらに成長していく聖。羽生とも互角の戦いを演じるまでになり、互いに特別な存在として意識し合う間柄となる。しかしその頃、病魔はさらなる残酷さで聖を蝕み始めていた。ある日道端で倒れた聖は、膀胱癌に冒されていると医師から告知される……。


鑑賞前のポイント

鑑賞前の情報収集は、積極的に行った方がよいタイプの映画です。実在の人物の実際の物語をもとにしているため、ネタバレという概念がほとんどあてはまりません。主人公が最後には亡くなるのだということも明らかになっています。当記事も「ネタバレなし」とうたっていますが、最初から最後までのあらすじをがっつり書いてしまったとしても、映画の楽しみが損なわれるということはまずありません。「観て初めてわかる」という部分にこの映画の凄みが凝縮されているからです。

羽生善治や森信雄らもこの映画の公開にあたってさまざまなコメントを出していますし、積極的に触れてみるとよいでしょう。また、松山ケンイチや東出昌大はこの映画ならではの凄まじい役作り・準備をしており、そのあたりの情報をインプットしておくとより楽しめるかもしれません。

将棋のルールについての予備知識としては、「交互に駒を動かして王を詰ませるゲーム」ということがわかっていれば問題はないでしょう。ただし、将棋界の制度、特に「新進棋士奨励会」という制度や段位・タイトルなどについて基礎的な知識を持っておけば、よりスムーズに物語を追うことができます。

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